2010年12月31日

相棒 −劇場版II− 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜

 なんで劇場版のサブタイトルは土ワイチックに戻るんだろう・・・。
 さんざん前宣伝もされていますし、大ヒットもしているようですし、ストーリーについては割愛します。

  相棒Uポスター.JPG あなたの正義を問う。

 前半はすごく面白かった! 右京さん(水谷豊)のあっさりとしたアクションシーンのコミカルさ、でも事情を説明する際にちょっと息切れしていたり、「はい〜?」もちょっと気が抜けてたり。 神戸くん(及川光博)と大河内管理官(神保悟志)のシャワーシーンが何故かあり、「え、サービスショット?」と目が点になったり。 有能なのにうっかり八兵衛的イメージが拭えない米沢さん(六角精司)がやはりうっかりをしでかしたり、中園参事官(小野了)のあまりの仕事のできなさぶりと腰ぎんちゃくぶりに怒りを覚えたりなど、『相棒』ファンキャリアが長い故の登場人物への愛着を感じるシーンのオンパレード。 事件もハイテンポで進みます。

  相棒U−1.jpg もうこのツーショットにも慣れました。

 右京さんの服装で日時の変化を読み取るあたしは「おおっ、右京さんがガングラブチェックのスーツを! え、無地と思ったらピンストライプ?!」とまるで神戸くんの影響を受けたかのようなファッションの変化に動揺しました。 腕時計がジラール・ペルゴになっていたのにもびっくり(ハミルトンぐらいのお値段のものを愛用してると思っていたのに・・・というかなんとなく勝手に右京さんは腕時計に20万円以上使うような人じゃないと思っていたよ。 イギリス時代に蚤の市かなんかで安く買った品だと思っておこう)。
 また空撮から始まるのかしら、と思わせておいて実は海上から始めてみたり(しかし多分東京湾のどこかという設定なのでしょうが、どう見ても外国・・・)、オープニング・エンディングが前作に比べてぐっと映画っぽくなっていたり、前作からの進化を感じます。

  相棒U−8.jpg トリオ・ザ・捜一、また微妙な出番だ・・・。

 警視庁内に潜む闇・警察庁との対立など、『相棒』お得意の組織論はそのまま一般企業といった組織にも通じるのでしょうかね。 だったらあたしも“特命係”で仕事の目的のために自由に動く方を選びます。

  相棒U−4.jpg きゃー! 國村さん!
    長谷川副総監(國村隼)にはテレビシリーズのほうにもまた出ていただきたい。
 宇津井健ってこんな釣り目だったっけ?、とかも含めて地味なようで派手なオヤジ祭的キャスティングにも盛り上がります。

  相棒U−7.jpg 悪いこと考えてそうな二人。

 それ故に、なんか失速する中盤に「あれ?」となり、事件と直接関係ないところ(実際は関係ないわけではないんだけど・・・)で大見せ場となってしまう最後には、「え?」、となってしまい、そのまま迎えたラストシーンには「事件、終わってないじゃん!」と絶叫したくなる始末。
 そう、事件は終わっていませんが、この先に右京さんがとるであろう行動は想像できます。 だからそれでいいのだと言われればそれまでですが・・・なんか「この続きは次回!」って言われたような気がして。 ていうか、この落とし前はシーズン10初回でつけてもらわないとやってられないぜ!
 前作はお祭り感が強くて、ミステリとしては大きく破綻していたけれどあれ一作で一応話は終わっている、という意味では映画として成立していたのかもしれず、世界観やら脚本の出来は今回のほうが質は高いにもかかわらずテレビシリーズと連動させなければ全容が伝わらない、という意味では今回のほうが映画として成立し得るのか、という謎が。 これはテレビシリーズの映画化が持ち続ける永遠の課題なのかもしれないですが、正直なところここまでシリーズの重要人物にとって大事件が起こる話を映画でやってしまうのは、テレビシリーズのファンに対して失礼なのでは、と思うのです。
 時間軸的にはシーズン8から9の間の出来事だし、シーズン9の初回スペシャルとして、もしくは9の最終回として放送すべき内容だったのではないか。
 演者のみなさんはそれぞれいい仕事をされていたし、テレビスペシャルとしてだったら語り継がれる伝説の作品になっていただろうに・・・と思うと、制作側の事情が見え隠れするこの劇場版には正直悲しくなる。 面白いですよ、もう一回見に行ってもいいかなぁと思うくらい好きですが(結構手がかり見落としてる気もするので)、以上の理由により大変残念です。
 あたしの前を歩いていたカップル(多分女性のほうが『相棒』ファン)の男性の「これだったらヤマトのほうが面白かったんちゃう?」というつぶやきが『相棒』ビギナーの感想のまとめだったら悲しすぎるし・・・。
 実は先日BSフジで『古畑任三郎:すべて閣下の仕業』が放送されていたのでDVDに落としたわけですが・・・あたしはこれの本放送当時、古畑さんの苦悩をライツヴィル物時期のエラリィ・クイーンになぞらえて読み取っていたのですが、今回改めて見てみると、ミッチーが出ているという共通点もさりながら、「権力者側の悪vs.それでも法律は守らねば」の構図がすでにここにあるんですよね・・・。
 いや、パクリだとかそういうことを言いたいわけではない(そもそも杉下右京というキャラクター自体が古今東西の名探偵要素をすべて合わせもった人物ですからね、古畑からの影響も当然ありましょう)。 放送時期から考えれば古畑に相棒が影響を与えたのかもしれず(そしてこれがあったからミッチーが新相棒に起用されたのかもしれず)、社会派に行こうと思えば行けたのにあえて行かなかった(でも環境保護テロリストとかかなり触れてる部分はあり)・三谷幸喜という一人の脚本家で書き続けたために結果的に作品数が少なくなった(多分ホラでしょうけど、ご本人はホームズ正典と同じ数の話を書きたいとは言っていたのだ)、ということを考えれば、「長く続ける」ということはものすごい労力と人出を必要とするのだなと実感。

  小野田&右京.JPG 上映時間ぎりぎりに駆け込んだので気づかなかったんだけど、帰りにこのパネルがあった。
    最初に出さないようにという指示が出てるんだろうか。

 そう思うと、『相棒』は物語の落とし所を探しているのだろうか、それとも更に続けるために無謀とわかりつつ大手術をしたのだろうか・・・。
 社会派じゃない、純粋にミステリとしての『相棒』を、次の映画があるなら見たいです。

  神戸くんカード.JPG 神戸くんクリスマスカードをいただきました。
     もう過ぎたけど、余ってるのね・・・。


 というわけで、今年のあたしの映画館で観た映画、これで終了です。 長々とお付き合いありがとうございました。
 マイベストテン、ちょっと考えさせてください。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

最後の忠臣蔵

 吉良邸に討ち入りした赤穂浪士たちは全員切腹したと思われているが、実は密かに大石内蔵助の密命を受けた二人が生き残っていた。 寺坂吉右衛門(佐藤浩市)は討ち入りの様子を後世に正しく伝え、殉死する家臣の家族の手助けをするようにと。 そしてもう一人の瀬尾孫左衛門(役所広司)は討ち入り前夜に姿を消し、命惜しさに逐電したと思われている。 あの日から、16年。 かつて親友であったが故に瀬尾の裏切りを信じられない寺坂は、面差しの似た男を見かけて追いかける。

  最後の忠臣蔵1.jpg この女性の存在は重要ですが、ネタばれになると思うので避けます。

 これ、以前映画館のチラシで主なストーリー最後まで書いてるのを読んじゃって、「うわっ、もう見なくていいじゃん」と思ったのだが・・・(誰だよ、あんなチラシをつくったやつ!)、まぁ忠臣蔵を見るなら年末だよねと思った次第。
 とはいえ16年後のサイドストーリー、これは「死に場所を奪われて彷徨し続けた正反対の二人の男の物語」なのでした。
 なので現在と16年前の回想場面で、佐藤浩市・役所広司ふたりとも大して若くない(現在パートではそれなりに同い年っぽく見えないようになっているが、ただ単に役所広司側には生活の疲れが見えているだけのような?)のが微妙・・・そして16年前もただの足軽に見えない佐藤浩市の貫録につい笑いが。

  最後の忠臣蔵4.jpg 「何があったんだ!」

 正直なところ、お互い事情を話してしまえばあっさりとける誤解にもがいているみなさんに、いらっともします。 しかしそれが「武士のさだめ」と言われてしまえば納得するしかない日本人でございます、結局ちょっと泣いちゃうし。
 でも、大石内蔵助の瀬尾への命令はかなり個人的というか、勝手で私的なお願いなんだよな〜。 でもそれを自分に与えられた使命と受け取る場面には涙を誘われてしまうんだけど、上司としての(つまりは家臣の命を預かる者としての)大石内蔵助には大いに失望させられた。
 人形浄瑠璃を引用するくだりは「わかりやすくしすぎじゃない?」と感じてしまったけれど・・・忠臣蔵話に難解さを求めるほうがおかしいのだと途中で気づく。 むしろベタなくらいでちょうどいいのかもしれない(が、行列のシーンはベタすぎだろ・・・と後半げんなりしたが、孫左の誤解がとけてよかったねぇ、と素直によろこぶ自分もいるのです)。
 孫左は使命を果たしたからではなく、使命を超えた感情を自分が持ってしまったことが許せなかった・・・と解釈しました。 それもまた忠義故だと思いますが・・・だからこそ、寺坂もその気持ちがすぐわかったのでは、と。 
 役所広司と佐藤浩市、この二人の演技合戦が見れたというだけで満足できる映画、なのかもしれない。 個人的には今回の伊武雅刀さん、超いい役どころです!

  最後の忠臣蔵5.jpg 季節の移り変わりの表現が素晴らしい。

 『桜田門外ノ変』とは対極の、「武士の生活」のディテールがそこにはあって、エンディングで黒澤組や市川組と呼ばれたスタッフの方々の名前がぞろぞろ続いたのに納得。 しかしみなさん結構な御年のはず・・・後任は育っているのだろうかと余計な心配をしてしまった。 けれどそれもまた、日本らしき日本映画をこれからもつくっていただくためです。 よろしくお願いします。

ラベル:日本映画 映画館
posted by かしこん at 19:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

隠された日記〜母たち、娘たち/MERES ET FILLES

 理解し合えない母娘、というテーマは最近多い気がする。
 いや、もとからあったんだろうけど、そういう作品の公開が続く印象があるせいかも。いま、予告でやっている『愛する人』もそんな感じだから。

  隠された日記1.jpg 手前から、娘・母・祖母

 この映画ではうまく意思疎通できない母と娘に加えて、突然失踪した母の母(つまり祖母)の存在が大きい。 つまり女三代のそれぞれの人生を壮大ではなく比較的コンパクトに描いて見せた作品で、その分余韻が大きいんですけどね。
 オドレイ(マリナ・ハンズ)は普段はカナダで働いているが、久々に両親の住む故国フランスの海辺の町に帰って来た。 父は歓迎してくれるが、医師である母のマルティーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の態度はぎこちない。 二人は昔からうまく意思疎通ができず、大人になってもそれは変わらなかった。 居心地の悪さを覚えたオドレイは近所にある、亡くなった祖父がかつて住んでいた海辺の家に移ることにし、台所を大掃除していた最中に失踪したと聞かされていた祖母ルイ(マリ=ジョゼ・クローズ)の日記帳を見つける。

  隠された日記6.jpg このお父さん、すごくいい感じ。

 たった三世代なのに、女性をめぐる社会的な環境はここまで変わるかという驚きとともに、変わらないものもやはりあるのだなぁ、としみじみ。 ちょうど激動した時代にこの三人があたったということもあるでしょうが・・・フランスでも「女性は家にいて、家事だけしていればいい」という時代があったというのがやっぱりなんか悲しい。
 しかし日記帳から垣間見える、そしてオドレイが今暮らす家に残るルイの姿は悲しいのだけれど美しくて。 抑圧されても貫きとおしたい自分の意志の輝き、というのでしょうか。

  隠された日記4.jpg でも家族を愛していたことには変わりないのに。

 けれど失踪した母を「自分を見捨てた」と恨みながらも母親の「女もこれからは仕事を持って自立しなければ」という教え通りに医師になっているマルティーヌは、とても複雑な心情を抱えて今まで生きてきたんだろうなぁ。 本人の平穏のためには子供は産まなきゃいいと思うのだが、それでも彼女は娘を産んだ。 そこに救われたい気持ちがなかったなんて言えないよなぁ、たとえ娘との関係構築に失敗しても。
 カトリーヌ・ドヌーヴ、やはり年齢が年齢なので(とはいえ美しいのに変わりはないんだけど)上半身にはお肉がついてきてしまってるけど、なんでそんなに脚が細くてきれいなんですか!

  隠された日記3.jpg 次の『しあわせの雨傘』も見るよ!

 会話は基本フランス語ですが、オドレイがカナダの人と電話で話すときは英語になる。 それがなんか、違う言葉を話すことでその人のキャラクターもちょっと変わるようにも見えて面白かった。
 美女三人の葛藤と克服の物語と思いきや、途中からミステリーになりました!

  隠された日記2.jpg 信じたくない真実。

 その事件としての地の足の着き方が『黒く濁る村』と大違いで、よりこちらのほうが悲しいのだが好感(?)を持った。 だからマルティーヌとオドレイは一緒に泣けて、一緒に乗り越えられる。 もとから憎み合ってたわけじゃない、ただお互い感情をうまく表現できないだけだったんだから。 海辺の家にはこんな話があってもいい、と思わせる素敵なロケーション。
 それもすべて、三人の演技が説得力があるからです!
 そしてやはり安易に泣かせないフランス映画、ルイの美しい横顔が最後まで物語を救う。

  隠された日記7.jpg それに見とれるオドレイの気持ち、わかる。

 マリ=ジョゼ・クローズさんって『潜水服は蝶の夢を見る』の看護師さんだったそうで・・・うわー、全然別人な感じ! 50年代の服装・髪型のせい?
 女同士は難しいが理解し合えると早い。 でもやっぱりそこまでが大変。
 いろいろ大変なんだけど、女のほうが人生は面白いのかも・・・そう思えた、これもよくできたいい映画でしたよ!

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 02:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする