2010年12月14日

リトル・ランボーズ/SON OF RAMBOW

 <映画『ランボー』を見て盛り上がった子供たちが『ランボーの息子』という映画を作ろうと思い立つ・・・>というあらすじを聞いたとき、「キワモノか?」と思ってひいた。
 しかし、パブリック写真の少年はかわいい。 で、ポスターのコピーを読めば

  リトルランボーズポスター.JPG 大人になるしかなかった子供と、子供らしさを禁じられた子供。 彼らを救ったのは愛でも、神様でもなく、<たった一本の映画>だった。

 とある。 ちょっと待て、あのあらすじ、損してるぞ!
 舞台はイギリス。 11歳のウィルは厳格な特定宗教の教えを守る家庭で育ち、普通の子供がしていること(たとえばTVを見るとか、学校帰りに寄り道するとか)を禁じられている。 それどころかすべての娯楽が禁じられているとだんだんわかってくる。
 テレビを使った授業の際、教室を出されたウィルは懲らしめのため廊下に立たされたリーと出会い、始めは恐れながらも純真なウィルはリーの嘘を疑うことを知らず、そのまっすぐさにいつしかリーもたじたじとなり、そしてリーの家で見た隠し撮りの『ランボー』がウィルの気持ちを解き放つ。

  リトル・ランボーズ1.jpg なりきりランボーの息子です。

 まず、このウィルの家の宗教ってなんなんだ?、と怒りが禁じえなかったり。 
 モルモン教とアーミッシュが混ざったものみたいな印象でしたが、『プリマス同胞教会』は現実に存在するらしい。 信仰は自由だと思いますよ、でも親の信仰を子供に押し付けるのはどうなのか・・・仮に、そこを抜きにしても信仰の世界を強いている子供を普通の学校にやるのは大問題だろう。 無菌培養するなら徹底してやるべきだ!
 大人の中途半端さの犠牲になるのはいつも子供なのだから。
 だから『ランボー』に出会って暴発しまくるウィルが、いとおしくてたまらない。
 隠さずにはいられなかった父親不在の寂しさがランボーに対して爆発? ランボーの息子になって父親を救出したいのは父親を助けられなかった自責の念?(最初は宗教的なことに耐えられなくて出て行った父親を取り戻したい気持ちのあらわれなのかなと思ったけど、途中でウィルの父親は亡くなっていることが判明) 
 “遊び”を知ってしまった楽しさの暴走は、禁じられていたが故に危険を教わってない無防備さと相まってハラハラドキドキさせられます(でもランボーをランボウだと思いこんじゃっているところがまたかわいい)。

  リトル・ランボーズ2.jpg トラウトマン大佐だ!

 それに対して学校の問題児リーは、老人ホームを経営している両親はお金には困っていないが留守がち。 高校生の兄ローレンスがリーの世話役だが勿論世話なんかするわけなく(むしろ弟をアゴで使い)、自分勝手に遊びまわってばかり。 リーも十分にかわいそうなのであるが、なんかウィルにはかなわない・・・(あくまで、私見)。
 無茶苦茶な学校生活も描かれており、フランスからの留学生でいちばん人気のディディエのぶっとびぶりに地味なイギリス人生徒があっさりノックアウトされて手下っぽくなってしまうのには大爆笑だ(しかもディディエ役の子、『バティニョールおじさん』や『ぼくセザール10歳半1m39cm』の彼だったのである! 育ってる!)。

  リトル・ランボーズ6.jpg ディディエととりまき

 あまり深くは描かれないが、集団生活の残酷さもきっちりおさえられてますよ。 でもいじめはあまりひどくないので安心。
 いつしか映画をつくることがまず第一目的になるウィルと、「お前と一緒にやりたいんだよ!」のリーとは感情の齟齬が生まれてくるわけですが・・・どっちの気持ちもわかるなぁ。 素直すぎる人と全然素直になれないやつとではなかなか意思疎通できないのがかわいくてかわいくて(客観的に見れば世間知らずが服着て歩いてるウィルに個人の感情の機微を推測しろというのが無理な話なのでここはリーが折れるべきだと思うけど無理だよね・・・だって子供だもんね〜)。
 果たして二人の友情は破綻してしまうのか?! 映画は完成するのか?!
 なんかそうなるんだろうなぁ、と思いながらもつい泣いてしまう展開でした。
 娯楽を持てなかったウィルが日常と空想の延長線上が混ざってしまう描写とか、なんとなく『ポビーとディンガン』を思い出すものがある・・・雰囲気とか、思いもかけず泣いちゃったところとか。

  リトル・ランボーズ5.jpg 初めて普通の少年ぽくなる二人。

 いやー、あらすじで投げちゃわなくてよかった。 素晴らしい映画ですよ。
 サブテーマには「なんだかんだ言っても、ひどい目にあわされてもお兄ちゃんのことが大好きな弟」というのがあり・・・男兄弟ってこうなのかなぁって不思議な気持ち。 ちなみに英語では「ちょっと待って!」は「Two minutes!」なのね。
 監督のガース・ジェニングスは『銀河ヒッチハイクガイド』の方だそうで・・・遊び心忘れぬ画作り、子供の演出のうまさなどとても長編2作目とは思えませんね!
 でもエンディングでびっくり・・・2007年制作って・・・公開遅すぎるだろ! ・・・でも、公開されただけましなのか・・・黙殺されてる佳品、いっぱいあるんだろうなぁ。 いい映画を紹介しないで“洋画離れ”とか言わないでほしいよなぁ。
 とてもいい映画だっただけに、もはや日本では映画は文化ではなく所詮商売なんじゃないのか、な気持ちもよぎる。
 あたしも神戸の公開最終日に駆け込んだし、全国でも公開してるところ少ないと思うんですけど、DVD出たらぜひぜひ多くの方に見てほしい一本です。
 『ぼくのエリ』に続き、これもあたしの今年のベストテン入り確実。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 01:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする