2010年12月11日

約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語/THE VINTNER'S LUCK

 アルコール全然ダメなくせに、ワインは好きです。 飲むとか味とかではなく、その“存在”というべきものが(多分中井英夫と、川原泉の『美貌の果実』のせい)。
 だからワイン題材の映画も見ちゃいます。
 19世紀のブルゴーニュ地方、農夫のソブラン(ジェレミー・レニエ)はいわゆる小作農で地主のワインづくりを手伝っているが、心の中ではいつか自分自身のワインを、それも最高のワインをつくり出したいと思っている。 ある日、そんなソブランの前に天使(ギャスパー・ウリエル)が姿を現し、テロワール(という言葉は使わないが)について語ったりしてワイン造りの心得を教えたりして、「毎年この日に会おう」といきなり約束されてしまう。 「え、一生?」とたじろぐソブランがおかしい。
 なんかあらすじをこうして改めて書くとすごくアヴァンギャルドな話に思えてしまうけど(まぁ実際なかなかアヴァンギャルドな展開もあるんですが)、でも時代の雰囲気とか空気とかをすごく大事にした手堅い映画でもあるのです。
 が、フランス映画だと思っていたので台詞が英語なのには最初ビビりましたが・・・まぁ、慣れます。
 『クジラの島の少女』の監督さんだそうで・・・その時の少女も出ているのですがあまりの育ちっぷりに「え?」となりました。

  約束の葡萄畑3.jpg これでも19歳だそうな・・・。

 ソブランの妻の役ですが、ケイシャ・キャッスル・ヒューズ、プライベートではすでに17歳で出産したらしく(その子供も娘役で出演)・・・なんというか時の流れは無常ですなぁ。
 ソブランと天使は一年に一度会うはずなのに、週に一度ぐらいで会ってないか!、と感じてしまうほど、映画内での時間の経過感覚は結構無茶苦茶です。
 でもなんか面白いんだよなぁ、不思議。 天使といってもリアルな羽毛の翼をつけてるし(そんなのでは絶対飛べまい、という)、ファンタジックさとリアルさとシュールさを意図的に履き違えた感じが、多分受け付けない人には無理な世界だと思いますがあたしは結構楽しんでしまいました。

  約束の葡萄畑4.jpg ギャスパー・ウリエル、こんなゴツかった?

 ただ、ワイン造りという面からみると描かれ方が中途半端かな〜。
 ビギナーズラックでできた最初のいいワインを毎年越えられない苦悩もソブランの心情に寄りすぎて他からそれが伝わらないとか、大事なのはブドウづくりでワイン造りには工夫はないのか?、とか、ちょっと気になる(当時のワイン造り過程、あたし前に見たけど忘れたし)。
 後半は地主のあとを継いだ男爵夫人(ヴェラ・ファーミガ)とソブランの交流、そしてあの時代に女一人で、しかも統治する側として生きていく彼女の懸命さと痛々しさに目が行ってしまいますますワインは添え物になっていくのだった。

  約束の葡萄畑5.jpg ヴェラ・ファーミガ、美しすぎ!

 そして男爵夫人が輝くに従い、ソブランの妻がまったくいいところなくなっていくのが悲しい。
 というか、結果的にワインに一生を捧げてしまった人たちの話なんだな〜。
 ワインの味わいは人生を語るものであり、映画もまたしかり。
 地味な振りして実はいちばんソブランが罪深いというか、彼がまわりの人たちを巻き込んで人生を狂わせてしまったような気もするのだが・・・。

  約束の葡萄畑2.jpg だって苗木を寒さから守るために妻と娘のペチコートを切り裂くもんね。

 そんなジェレミー・レニエが『ある子供』の若きダメ父だったと終わってから知ってびっくり! うわっ、役者としての成長ぶり、すごい!(でもやっぱりダメな人が似合うんだな・・・)
 時代的な衣装とか小物とかなかなか美しく、土や虫にフォーカスする様も楽しく、やっぱり女性監督ならではの気配り・こだわりに気づいてうれしくなるのも見る側が女性であることの特権なんでしょうか。 勿論美意識は最終的には個人差なんですが、なんだかんだいって「同性だからわかること」もあります(そして「同性だからこそわからないこともね」)。
 ただ宗教観はいまいちよくわからなかった・・・個人としての決断としては気持ちいい部分もあるのだけれど、その背後にある信仰心とかまで想いを馳せる余裕はなかった。
 あたしは神道と仏教のまじった土地に生きる日本人だなぁ、と思ったり。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする