2010年11月15日

マザーウォーター

 もうこの流れを“『かもめ食堂』のスタッフが贈る!”みたいなコピーにするの、やめません? 『プール』以降はそもそも監督も脚本も違うんだしさ。 ということを『かもめ食堂』の荻上監督の新作『トイレット』がすごく面白かったので余計に感じました。 失礼ですよ、いつまでも昔の名前を利用するのは。
 というのは、この映画、ほんとに何も起こらないからだ・・・。
 後ろの席で10分もしないうちに爆睡してる人がいた・・・気持ちはわかる。
 舞台は京都。 ウイスキーしか出さないバーのセツコ(小林聡美)、注文が入ってから豆をひく珈琲屋さんタカコ(小泉今日子)、すべて手作りのお豆腐屋さんハツミ(市川実日子)は街を闊歩するマコトさん(もたいまさこ)を介して知り合っていく。彼女たちはそれぞれの事情を持ちながらこの町に辿り着いたのだった。

  マザーウォーター1.jpg あまりの生活感のなさにひきそうです。
 まぁ、「何も起こりません!」的なことはチラシでも断ってますよ。 だけどなんの工夫も感じられないカメラワークにカット割り、会話劇にすらならない脚本(『ヤギと男と男と壁と』の面白さを見習ってくれ!)、新たにキョンキョン出せば済むと思ってんのか! もたいまさこにあやしげな雰囲気のあるばーちゃんをやらせればそれでもつと思ってんのか!(まぁもってしまうんですけどね、これが)
 あたしは貧乏よりも貧乏くささを憎むが、根拠のない裕福さというのにも胡散臭さを感じてしまうようだとこれを見てわかった。 バーもコーヒー屋も豆腐屋も、とても採算が取れているとは思えないんですよね。 ファンタジーなんだからそれは追及するなということかもしれないけれど、少なくとも『かもめ食堂』では客の入りを気にしてた、受け入れてもらえるようなメニューづくりをしてた。 だから話も盛り上がったし、料理のおいしそうな感じも大事だったのに。

  マザーウォーター3.jpg この二人が何を食べているのか最後までわからなかった。
 役者が悪いわけじゃないんだけど・・・なんというんでしょう・・・たとえば、親戚一同が久しぶりに集まった席で小さい子供が一人いたら場がなごむというかその場がもつというか、そんな子供頼りの映画でしたよ。 そしてその赤ん坊の名前は“ポプラ”。 ふざけてんのか。
 小林聡美は好きだけど・・・あたしはもういいかな、このシリーズ。

  マザーウォーター4.jpg 会話は基本、二人で。
 バーの常連で家具職人のヤマノハさん(加瀬亮)はセツコさんのことがちょっと好きな感じですが、セツコさんはそういう雰囲気をあっさりシャットアウトでなんかかわいそうになったり。 せっかく飯島奈美がフードコーディネーターなのに料理をはっきり映すことはしなくなり、ヤマノハさんがはしゃいでいるサンドイッチがいったい何なのかあたしにはよくわからなかった(エンディングの画像でビフカツ?と判明。 ホットドッグなのかもと思ったし)。

  マザーウォーター6.jpg やはり食パンは超熟なのか?
 初めて店に来たハツミに出した水割りはヤマノハさんよりはるかに薄く、でも来店回数が増えるたびに濃くなっていくのはどういうわけだ。 お客さんのことを考えてというより目分量っぽく見えるのはあたしが意地悪な目で見てるから?
 うーん、それに子供の世話を気がついた人が見るっていうのもなんだか・・・町が子供を育てているとでも? でも誰が責任取るのか? 登場人物はみな好き勝手に生活の苦労を感じさせず自由にのほほんと暮らしているのに、何故赤ちゃんの母親だけ最後まで出てこないくらいにいそがしくなきゃいけないのか?
 そう、自由を謳歌する人々を支えている底辺の人々の存在がここでは軽視され、のみならずそういう人たちを自由人たちはサポートしてあげてるんですよ的な無意識的な善意の押し売りが、腹立たしい。
 そもそもほんとに京都なのか? 誰一人京都弁喋らないし(銭湯のお客としてエキストラっぽいおばあちゃんが出てくるけど、彼女が登場することでもたいまさこのおばあちゃんがつくりもの・ただの老け役であることがわかってしまうので逆効果である)。 京都というか関西であることが感じられたのはカツがビーフなことと、サンドイッチの卵が細かく切ってマヨネーズで和えたものじゃなくて卵焼きだったことぐらい(それを映画内では普通に赤ちゃんに食べさせてて、「最近の子は卵アレルギー多いんだぞ! 大丈夫か!」とはらはらしたあたし)。
 全体的に、気配りが足りません。

  マザーウォーター2.jpg それが「癒し」だというの・・・?
 ただこれが「死者たちの日常」ということならば納得のいかないことはないのだが・・・しかしだったら赤ちゃんの母親の登場はいらないしなぁ。
 まぁ『トイレット』のあとなので喋りまくるもたいまさこはちょっと新鮮に感じてしまったけれど、それでも「浮世離れ系のちょっと変わった人」ばかりやらせるのはどうなのかと・・・キャスティングというか役者に丸投げというのは日本映画が本質的に抱える欠点だと思うので、早いところ意識改革しないと邦画バブルがはじけたあと何も残らない・・・ということになっちゃうぞ。
 むしろ『すいか』の続編のほうが見たいなぁ、とストレスがたまったあたし。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする